梅雨の部屋 ―十句―
             山内 美恵子

 青葉冷え病夫の脚をもみほぐす

 戸袋の雛の巣立ちて老二人

 目白来る病夫少年の顔となり

 駄々つ子のぴたりと泣き止むさくらんぼ

 揚羽蝶呼べばまつすぐ近づきぬ

 梅雨寒や病夫にかけやるわが上衣

 踏んばつて大蟷螂(かまきり)の通せんぼ

 願いごと二つ叶うやいと涼し

 「ありがとう」病夫のひと言梅雨はずむ

 梅雨の部屋白檀ほのと医師待てり