夏に入る十五句―  
                  山内美恵子 

青き窓大きく開けて髪切らる

萬緑の民家に朱(あか)き社あり

でで虫の親子をそっと葉に移す

武蔵野をわがまほろばに木々芽吹く

誤字当て字多きゲラ刷り青なつめ

スキップの児の九九すらすら柘榴(ざくろ)笑む

かみ合わぬままの会合ねぢり花

舞い降りて軽鴨よちよちついて来る

青梅雨や終始無言の瀬戸物屋

鎮守の森青きをまとひ児ら駈ける

余命なき白皙(はくせき)の友さくらんぼ

子はすでに親を越へをり枇杷(びわ)たわわ

腰低き医の腕たしか風かおる

講終へて子が待つ銀座母の日よ

老講師知識小出しに夏に入る