〈詩〉
      空 蝉
             高橋 勝

種を蒔き 秋の実りを待つ
麹を発酵させ 熟成を待つ
手塩にかけ 気づくのを長い目で見守る
しっかり冬眠して 時期を待つ 
その一方で
合格通知を夢見て 闇雲に勉強する
手紙の返事が今日こそは届いていないかと
何度も郵便受けを確かめに行く
仕事の委託に期待を抱かされるだけで
止むに止まれず 地団駄を踏む日々

懲りるという言葉は浮かんでも 
その都度 激浪にのみこまれるだけだった 
だが あるとき 蝉のぬけがらが
艶な姿で小枝にしがみつき 
風に揺らいでいるのを目にした
こうした生きざまはどこまで続くのか
その果てに いったい何があるのか
人の一生とは何なのか 
一匹の昆虫 一株の植物とどこが違うのか

梅雨の合間 近くの里山に行ってみると
遊歩道には 冷ややかなそよかぜ
青く繁った葉っぱには 
雨露がまだ微かに光り 共にゆりうごく
鉄砲百合が 斜の山肌の
上の手にも下の手にも行く手にも 
樹木の傍らや岩の狭間で細い首を深く垂れ 
歩み行く先々に香をまき散らす
あ 萩の早咲きが 目の前に
薄紅色の小顔をいくつか覗かせている
そういえば 蝉が 
森の奥まで命のシャワーを響かせている
なんだろう …
この感覚は