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百花園は、江戸の町人文化が花開いた文化・文政時代に造られた庭園で、花の咲く草花観賞を 中心とした「民営の花園」として開園されたそうだ。馴染みの草花がたくさん植えられていて、名前 の思い出せない花も、名札がついているのでうれしい。名前を覚えることで一層親しみが増すか らだ。夏の「虫ききの会」のお茶会がもたれるころは、キキヨウ、ヒオウギ、クズ、ミソハギ、フジバ カマ、ススキ、ナンバンギセルなどを墨田区のスカイツリーの見える場所で見ることができる。 私は数年前から向島の千穂庵でお茶の研究会に出席しているが、百花園のお茶会にも参加して いる。古くから地元の茶道家が協力しているとのことである。 都会のオアシスのような百花園には大勢の方が訪れるので、流派にこだわらず、気軽にお茶が いただけるとあって、てんてこ舞いである。 |
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お茶席の床にかけられている軸である。月が大きく書かれ、水を掬すれば手にあり、水を両手で 掬えば、そのわずかな水にも月の光を宿しているという、いかにも月見の茶会にふさわしい軸で ある。旧暦の8月15日に「十五夜」と9月13日の「十三夜」に月を愛でる風習があったようだ。 百花園ではお供え式がある。月がよく見える藤棚前に台が設えられて、団子や野菜が供えられ、 ススキが飾られる。 篠笛の演奏があり、夜の園内は、ぼんぼりや行灯がやさしく照らし、江戸時代はこんな風流を好 んだのであろうと想像できる。 茶席は御成り座敷で、二席ある。3時から8時までなので、電気で照らされてお点前をする。昼間 とは違った風情がある。 |
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お茶席に入った15名ほどはお月見のお団子を食べ、目の前で亭主が点てたお茶をいただく。 3客からは奥で点てたお茶を運ぶ。茶席のお手伝いの方々は20人ほど。 この日のために、2時間もかけて遠くから来る人もいる。9月は季節がいいので、気分転換に百 花園を訪れるのだろう。 風流な場所での月見に、お茶をいただく。多いときは100名ほども茶席を訪れる。 手伝いのメンバーはいつもの稽古仲間と違って、ほどよい緊張感のなかでお点前をするのも 勉強になる。 |
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この庭園には、万葉集など古典に詠まれている植物を集めているので、立て札もたくさん立て られている。山上憶良の秋の七草も植えられ、札も立っている。見ながら歩くのも楽しい。 秋の野に 咲きたる花を 指折りかき数ふれば 七種の花 萩の花 尾花葛花 なでしこの花 をみなえし また藤袴 朝顔の花 鳥の名の都となりぬ梅やしき 芭蕉「こんにゃく」の句碑 こんにゃくのさしみも些しうめの花 其角堂永機碑 朧夜やたれをあるじの墨沱川 |
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萩のトンネルである。秋の七草、マメ科で枝が垂れているので、写真のようなトンネルができる。 見上げると、赤紫の細かい花と白い花が咲く。明るいので歩くと気持ちが晴れる。 かつて山でよく見かけたが、低木で手入れがされていないので、こんなに清楚で可憐な花だった のかと感動した。 着物姿で歩いても違和感はない。いちばん風情があるかもしれない。 百花園の名称は、一説では「梅は百花に魁けて咲く」、または、「四季百花の乱れ咲く園」という 意味でつけられたらしい。 |