一口随想
          あさがお
                 水品彦平


 今年の春先、あさがおの種を買ってきました。というと自ら進んで買ってきたようですが、実は妻にせっかけられてのことでした。わたしは正直なところ、あまりあさがおを育てるなどということに気乗りがしませんでした。面倒くさい、というのが本心です。
 外玄関の脇にプランターを置き、そこに種を蒔きました。しばらくすると芽がでてきました。その芽が小さな葉をつけたと思ったら、見る見るうちに大きく伸びてきました。妻に、
「早く、ツルが絡みやすくしてやらないと」
 と、せかされました。やむなく、細い棒と紐を使って伸びやすいようにしてやりました。
 それからまた、ものぐさなわたしはすっかり忘れていました。水くれも妻がやっていたようです。
 ある朝のことです。明るい夏の陽ざしが強く差していました。日中はかなり暑くなりそうな感じの日でした。
「あら、お父さん、来てみて!」
 平穏なわが家にただならぬ妻の声です。起きたばかりの寝ぼけ顔で窓からのぞくと、
「ほら、あそこに」
 と、妻が指を差します。
 するとどうでしょう。青色のあさがおの花が咲いているではありませんか。
「おお!」
 思わずわたしの喉から感嘆の声がでました。
「あの種からなぁ」
 ひとりごとのように呟きながら、しばし見とれました。
 花びらは、全体に紫がかった青です。十枚の花弁が秩序正しく並んでいて、真ん中に小さなピンクと白の花心があります。他にも花弁が赤で、花心が黄色のものもあります。
 美しいこの色合いの妙は、えもいわれぬものです。命の不思議さをとくと感じさせます。人間がいくら知能を発達させても、このあさがおの美しい命を創ることはできないでしょう。せいぜい種を改良するぐらいでないでしょうか。命そのものを創造することは不可能と思われます。
 世の中には、他にも見るべきものがたくさんあります。世界を旅すればなおのこと、驚くほどの荘厳な美や雄大な景色も切りもなくあるでしょう。
 でも、このごろわたしは、この目の前に咲くあさがおのようなありふれた花に、他の何物にも負けない宇宙の神秘さを感じて、こころがふるえてしまっています。
  (十日町新聞に掲載)